いつもの場所で野鳥を観察しました.
続きを読む/Read more
現実世界では師走!しかし時間軸が崩壊している当ブログでは,未だに春の渡りが続いております.写真のストックは溜まるがこれがなかなか捌けない.毎日のように更新できる人ホント尊敬する.
今回はメボソムシクイとオオムシクイ,いわゆるメボソムシクイ上種に含まれる鳥の紹介.これらは一般に「ムシクイ(虫喰)」と呼ばれ,ぱっと見はウグイスによく似ているけど,実は南から渡ってきて日本やさらに北で繁殖する渡り鳥.
オオムシクイは英名にKamchatkaとあるように,南から渡ってきて北海道以北で繁殖する.一方のメボソムシクイは夏鳥として,標高の比較的高い山で繁殖する.これらはよく似た,というか外見がほとんど同じなので,この2種が混在する渡り期には,しばしその識別に悩むことがある.
オオムシクイ(Kamchatka leaf warbler, Phylloscopus examinandus)
5月中旬の朝7時頃,いつもの公園の広場にて."ジロジロジロジロ..."と,メボソムシクイっぽいのが鳴いているなぁと近づいてみると,樹上で茶色い小鳥が飛び回っていた.
ほどなくして,見易い場所に止まってくれた.これでも15m程の距離があったので,鬼トリミングをかけている.
そして囀りのサービスタイム.軽快なリズムで「ジジロジジロジジロ...」とはっきり聴こえる.ポカポカ陽気のなか鳥の歌を聴く,何とも贅沢な時間だ.
...ところがここで,あれ?メボソ?じゃない?と違和感が強くなってくる.メボソムシクイは「ジジロジ ジジロジ...」と4音の繰り返しで鳴く(この4音を「ゼニトリ」と聞きなす)のに,どう聞いてもこの子は「ジジロ ジジロ...」の3音ずつしか聞こえない.
さてはオオムシクイか.まだ確信とまではいかないので,とりあえずカメラを置いて録音をはじめる.その時録音したのが以下の音声ファイル(ノイズフィルタをかけた).実はバックグラウンドでキビタキも鳴いている.
間違いなく「ジジロ」のリズム.オオムシクイは3音で鳴くから,これはオオムシクイだと思いますよと,その場に居合わせた人に伝えるも,何故か反応が薄い.
せっかくよく鳴いてくれているのに,なんか勿体ないな~.でも後になって考えてみると,その理由はオオムシクイが「新しい」鳥であるからかもしれない.実は本種,2012年(日本鳥類目録 改訂第7版)に旧メボソムシクイから分離して独立種になったばかりの鳥(メボソムシクイ,オオムシクイ,コムシクイの3種がそう).なので,ベテランさんにとっては昔からメボソムシクイと呼んできた鳥.何の問題もないし,鳴き声も興味がなければ一緒なのである.
とはいえ,外見上の特徴はほぼ同じといっても,鳴き声,繫殖地,そして渡り時期の3つに決定的な違いがあるので,興味のある人は調べてみていただきたい.
ソナグラム
同定にあまり関心を持ってもらえずかわいそうだったので,もうちょっと分析をしてあげることにした.
上の音声を処理して,ソナグラムにしてみた.横軸は時間.縦軸は音の高さを示す.
黄色が強く出ているところが,オオムシクイと思われる個体の鳴き声.とりあえず,黄色の塊が12個くらいあって,よく見ると3×4になっているのが分かるだろうか.
メボソムシクイなら,例えばこれが4×4になる.(3,4音が何セット続くかは個体差がある)
分かりやすくすると ↓ こんな感じ.下にもう一度音声ファイルを貼るので,聞きながら比べてみていただきたい.
スマホの録音なのでノイズだらけ,低解像度ではあるものの,何とか種類を識別できるくらいのレベルでよかった~.
メボソムシクイ(Japanese leaf warbler, Phylloscopus xanthodryas)
おまけ.5月下旬撮影.メボソムシクイはこんな感じの鳥.アングルが悪いのもあって,写真で違いは全くわからない.でも,ハッキリ4音で鳴いていたので間違いないでしょう.
ところで,鳥のさえずりがない秋の渡りでは識別はどうなるかというと,これはもうお手上げ.僅かな外見の違いや地鳴き,観察時期から総合的に判断するしかないけど,常に「?」がつきまとう.
そんな残念な写真が私のハードディスクにも眠っている.
鳥の鳴き声を「法法華経」みたいに言葉に表すことを「ききなし」という.たとえば,
ホトトギス → 「キョッキョキョキョキョ」→「特許許可局」
センダイムシクイ → 「チヨチヨビー」→「焼酎一杯ぐい~」
ウグイス → 「ホーホケキョ」→「法法華経」
みたいな.
メボソムシクイはというと,
メボソムシクイ → 「ジジロジジジロジ」→「銭取り銭取り」
と,まぁ確かにそう聞こえなくはないが,かなり俗っぽい聞きなしをされる.
でも個人的には,忍たまのきり〇みたいでヤだなってことで.「ジジロジ」で普通に認識している.
というか,ききなし通りに鳴き声を覚えたことってない気がするのだが...
クリアな鳴き声はこちらを再生ください.