2022.05 キアシシギ (Gray-tailed Tattler)

キアシシギ(Gray-tailed Tattler)May, 2022
過去の写真からの投稿です.いつもの公園で野鳥を観察しました.

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キアシシギ(Gray-tailed Tattler, Tringa brevipes

5月(昨年の...)のある日,川にキアシシギが飛来していると教えてもらいました.

キアシシギ旅鳥.日本よりうんと南から,うんと北の繁殖地を目指している途中です.その長い旅の羽休めで日本に寄るのですが,普通は沿岸の干潟や湿地に集まるものです.それがまさか!この川に飛来するとは思いもしませんでした.

脚が黄色いシギなので「キアシ」シギとついています.鳩よりも二回りほど小さい,とても可愛い鳥です!

英名ではGray-tailed.鳥の場合,和名も英名も同じ特徴を捉えて命名されることが多い印象ですが.キアシシギは和と洋で着目する部位が違っていますね.他に脚が黄色なシギでもいたのでしょうか.ちなみに和名ではアオアシシギ,アカアシシギなんてのもいます.

このキアシシギは3羽.川の上下流1000mくらいの範囲を行き来しておりました.

脅かさないよう細心の注意を払いながら,寄れるとこまで接近します.尾が上を向いているのがかわいい.

川虫を探しているようです.

ここで200mほど上流(トップから2枚目の場所),最初居た場所へ飛んでいきます.

この川は,両サイドを護岸で覆った都市型河川.川面に沿って飛んでくるだろうことは想像に難くありません.
(襲われたら逃げ場なくね?とも思いますが,逆にこういった環境の方が安全なのかも.)

このまま待機していると5分後,戻ってきました.

背景には菜の花が咲いています.

飛翔速度はそこそこ.50km/sというところか.
河川の構造上,直線的にしか飛んでこないので私のカメラでも捕捉は容易です.

結局,この時は3,4日ほどの滞在となりました.

何処から来て,何処に向かうのか.果てしない旅.日本はその中継点にしか過ぎません.今頃,南の国を出発する頃でしょうか.
今年も来てくれることを願って.ベストウィッシュ!

 

キアシシギの鳴き声はコチラ.

global.canon

2022.04 ミソサザイ,キバシリほか (Eurasian wren, Treecreeper) @山梨県

ミソサザイ(Eurasian wren)April, 2022
過去の写真から投稿です.山梨県で野鳥を観察しました.

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ミソサザイ(Eurasian wren, Troglodytes troglodytes

4月下旬,夏鳥が続々と到着する季節.この日,山梨県の林道は標高1000mを越えた地点におりました.

着いたばかりの夏鳥は縄張り確保と求愛にまだ手いっぱい.でも留鳥・漂鳥と呼ばれる国内組には,すでに繁殖に入っているものもいます.この山の沢沿いではミソサザイが巣作り中でした.

巣材のベースになる苔を咥えています.ミソサザイは一夫多妻制.オスは自分の縄張りに,ダミーを含めて巣を何個も構えます.なので巣材の量も縄張りの広さも大変!

物凄いスピードで行き交っています.一瞬だけ姿を見せまた消える,の繰り返し.どうも道路に沿ってできた段差を利用して移動しているみたい.


排水溝が道路を横切っています.川に合流するU字溝の部分,ここだけ向こうが抜けて見えるので少し待ってみます.
ほどなくして.しゃがんでいる自分の下からなんか声が.車道を潜る排水溝.目を凝らすと,このグレーチング越しにミソがチャッチャと鳴きながら移動している?

まさか,川沿いに移動すると思ったら,車道を,しかも潜って突っ切ってきました.

そのままU字溝にかかる朽木に止まってくれました.

尾羽ピョコンです.ミソサザイはスズメよりも小さくて,日本最小クラスの鳥なのです.

巣に戻ろっかな~.もう少し集めよっかな~.そんな感じで長いこと(30秒くらい?)ピョコピョコしてくれて.

このあたりで後ろが騒がしくなってきます.通りがかりのカメラマンさん集団に見つかりました.そりゃバレます.どんな格好で見ていたのかは遡ってご確認しなくていいです.

きっと,五月蠅いなぁ~とか言ってます.
あーぁ.ゴメンねと心の中でミソさんに謝ったのでした. 

 

キバシリ(Treecreeper, Certhia familiaris Japonica

この山ではヒガラ,コガラ,ヤマガラゴジュウカラシジュウカラといった「カラ類」が群れをなしています.今回そこに混じっていたのがキバシリ(木走)です.
キバシリは樹皮に対して真っすぐ止まる鳥.両足と尾っぽの三点姿勢で移動します.

キバシリをキレイに撮れる(今回は全滅でしたケド...)のは,こうやって横向きになった時.でも動きが滅茶苦茶はやい.それにすぐ裏に隠れてしまうので撮影が難しいと感じました.

そして,恐らくなんですがキバシリ,らせん状に巻きながら木を登っているような気がします.
思い起こせばキツツキでもそのようなシーンがあります.巻きながら登ることで,同じ幹でも採餌する距離を伸ばしているのでしょう.

木に掴まるのは得意でも,下向きに降りていくのはニガテ.木の下からグングンと登って,上がり切ったらまた,違う幹に飛んで下から攻めていく.これを繰り返すようです.

ヤマガラ(Varied tit, Parus varius varius

ニーニーと鳴くオレンジ色の小鳥です.山ではよく見かける鳥です.

 

コガラ(Willow tit, Poecile montanus restrictus

シジュウカラに似ているけど,こちらはディーディーと鳴きます.ベレー帽とチョビヒゲが特徴.
アブ系の小昆虫をゲットしました.

 

ホオジロMeadow bunting, Emberiza cioides ciopsis Bonaparte

ピ チョチョン ピーチョチョチチみたいな独特の鳴き声.写真の子はお顔の熊取が薄いのでメスと思われます.ホオジロの仲間は,その属名をはしょって「エンベリ」なんて呼ばれたりします.

 

キビタキ(Narcissus flycatcher, Ficedula narcissina



なかなか小鳥が充実していて楽しめる山でした.

この日見た鳥
ミソサザイ,キバシリ,ヤマガラシジュウカラ,ヒガラ,エナガ,コガラ,ゴジュウカラ,カケス,ソウシチョウアカゲラキビタキホオジロ,トビ,ツバメ

鳴き声はコチラ

2023.01 オシドリ (Mandarin duck)

オシドリ(Mandarin duck)January, 2023
いつもの公園で野鳥を観察しました.

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オシドリ(Mandarin duck, Aix galericulata

この公園ではあまり記録がないオシドリが,それもペアで飛来しました.オシドリは木の”うろ”に巣を構える,少し変わったカモです.冬の間は平地にも飛来します.これから北海道や北東北に戻り繁殖するのでしょう.

何をしているかというと,岸辺の植物.これをついばんでいます.残念ながら写真はありません~.

オスの飾り羽根(オレンジ色のぴょこんと出ている)が目を引きます.
これは「銀杏羽」と名がついており,その正体は三列風切・一番外側の羽根です.飛行機でいうところの翼の付け根側にあたります.

↓参考になるサイトご紹介します


メスはメスで非常にかわいらしい.この2羽は日本にいる間に成立したカップルでしょう.

 

光の具合で色のない部分に来ました.

なんか水墨画チック.色のない世界にハデハデのカモ.
自分では気に入りましたが!これを表現するだけの腕がない~.

銀杏羽も含めたオスのハデハデな羽根は,繁殖期が終わると抜け落ちます.そうなると遠目では一緒に見えます.

これをカモ用語で「エクリプス」といいます.非繫殖期から初秋までの,オスの地味な羽衣のことを指します.そしてまた目を引く繁殖羽に生え変わってペアを結成し,北の地へと旅立っていきます.

最後は陸地で休んでいるところ.カルガモより二回りほど小さい.というかカルガモって意外に大きい.

 

おしどり夫婦 おしどりママ友?
実はオシドリは「おしどり夫婦」じゃない.
その驚愕の?真相は,ネットで調べれば詳述されているのでここでは省きます.
数年前,ダーウィンがきた!で北海道の大学構内のオシドリが取り上げられました.
オシドリのペア関係はその年限り.それどころか.メスが抱卵を始めるとあとは知らんぷり.そう.オシドリのオスは何もしないのである.それどころか.他所のメスと新たにペアになるオスもいるそうです.でもこれって,生物界では珍しいことではなくて,おしどり夫婦なんて言い出した人間側に落ち度があります.
さて,ダーウィンの放送のなかで面白かったのは,メス同士が協力してお互いのヒナを一緒に育てていることでした.
お母さんオシドリ2羽でヒナを一緒に見守ることもあれば,別行動時には互いのヒナをごちゃまぜにして連れていく.しかも合流するたびにヒナをまたシャッフルして育てる.全滅を防いで生残性が上がるよう,協力して子育てしているそうです.
この2羽だけが特殊なのかもしれませんが,逆境を切り抜けるためにママ友を結成したとは.恐れいります.オスが手伝えばいいじゃんとも思いますが,カモ界では事情が違うようです.

 

オシドリの鳴き声はコチラ.

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2023.02 シマエナガ (Long-tailed tit) @ 北海道

シマエナガ(Long-tailed tit)February, 2023
北海道で野鳥を観察しました.シマエナガ特集です.

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シマエナガ(Long-tailed tit, Aegithalos caudatus caudatus

Shima-Enaga,海外旅行客向けにも特集が組まれるほど.今や飛ぶ鳥も落とす勢いの小鳥さんです.

シマエナガの魅力はやはり何といってもモフモフボディとこのお顔
● ▲ ●
まずは今回の遠征写真をご覧いただきます.

かわいい....が,写真としては!たいしたものは撮れませんでした!
代わりに,シマエナガさん情報てんこ盛りでお届けします.

~ふわふわのからだ~

冬のシマエナガはモフモフになります.羽毛を膨らませて空気の層を作り,体温を保持するためです.空気は熱を逃がしにくいので,羽毛で抱えておくととってもあったかいのです.これはシジュウカラとか,他の多くの小鳥にも共通しています.

顔が白いのも冬羽限定で,夏は黒い眉毛を持つ姿に生え変わります.夏は体格もほっそりとし,後ろからみると落ち武者みたいに見えたり見えなかったり...

~どこにいるの~

本州のエナガと同様,町中でも林でも山中でも,基本どこにでもいる鳥です.が,最も安定して観察できるのは冬・市街地の公園.公園には色々な樹種が植わっており,餌を確保しやすい環境にあります.山の食料事情や冷え込みが悪化することもあり,シマエナガを含む多くの鳥は冬になると山を降りてきます.

行動パターンとしては,複数のエナガや,シジュウカラなど別種の小鳥(カラ類)と10~羽程度の群れを成して移動していることが多いです.基本的には本州のエナガと変わりません.

 

小鳥の中でも,エナガは比較的簡単に見分けがつく鳥です.識別ポイントとしては,
長い尾.「エナガ(柄長)」の由来は,長い尾を柄杓の柄に見立てたもの.
鳴き声.リリリとかジュリジュリとか,わかりやすい.
群れの先頭にいることが多い.やたらめったら速く動く.
でしょうか.
見るには難しくないですが,撮影は難しめです.なんせ小さい(日本で小さい鳥トップ3に入る).それに移動が速い.
見ての通りの小さな嘴は,いちいち樹皮をめくったり木の実をもいだりするには不向きで,次から次へと移動して虫などを啄んでいます.

~つららをなめる~

シマエナガ樹液を含んだ氷柱(つらら)を舐めることが知られています.何度かそのシーンを見ることがありました.氷柱舐めはエナガだけが行っているわけではありませんが,ホバリングが得意な分,他の小鳥よりも目立ってそのシーンが見られます.

~国内のエナガ4亜種~

そもそも,北海道以外の国内で見られるエナガ(A. c. trivirgatusほか,全3亜種)には写真のように黒い眉があります.4亜種目のシマエナガだけ,眉がありません.

国内の4亜種
1. Aegithalos caudatus caudatus:シマエナガ 眉×
2. Aegithalos caudatus kiusiuensis:キュウシュウエナガ 眉○
3. Aegithalos caudatus magnus:チョウセンエナガ 眉○
4. Aegithalos caudatus trivirgatus:エナガ 眉○

ちなみに「シマ」は北海道のことで,津軽海峡を越えて本州で確認されることは滅多にありません.なので世界的に見ても北海道限定かと思いきや!

 

なんとシマエナガ,ヨーロッパにかけて幅広く分布しています.分布図はこちらを参照ください.小豆色が北方系のエナガ=「シマエナガ」です.

 

(ただし近年,"Aegithalos caudatus japonicus"として,「北海道のシマエナガ」を独立した亜種とみなす動きもあります.素人目には違いがわかりません...)

具体的には,以下の4グループに分類されます.亜種の数については意見が分かれるところであり,17~20と言われています.

世界の亜種・4グループ
1. The caudatus group (1~?亜種・ヨーロッパ~アジアの高緯度,「シマエナガ」)
2. The europaeus group(9亜種・南~西ヨーロッパ,中国NE,日本3亜種)
3. The alpinus group
(7亜種・地中海から東南アジア)
4. The glaucogularis group
(2亜種・中国)

 ※ Harrap, Simon, (2010) Tits, Nuthatches and Treecreepers Bloomsbury Publishing Plc, p100. 

  

画像転載はできないので,それぞれのエナガグループの写真は以下のキーワードを打ち込んでご自身で調べてみてください.また,eBirdというサイトにも地域ごとの写真が掲載されています.
---------------------------------------------------
1. "シマエナガ" / 2. "エナガ" (日本),"Aegithalos caudatus rosaceus"(イギリス) / 3. "Aegithalos caudatus irbii"---------------------------------------------------
4. "Aegithalos caudatus glaucogularis"
---------------------------------------------------

エナガユーラシア大陸に広く分布していますね.渡り鳥ではないので,各地で独自の進化を遂げた結果,非常に多くの亜種を持つグループになったようです.

この中で眉がないのは,やはりシマエナガだけです.カムチャッカから北欧まで高緯度地域に広く分布しており,雪景色に溶け込みやすいよう白い顔になっているようです.

 

~で,どこでシマエナガを見ればいいの?~

ここまで書いてきて,普段野鳥観察をされない方にとっては,モフモフまっしろのシマエナガを見ることは相当困難であろうということがお分かりいただけたと思います.

その目で確実に見られたい方は,餌台(バードフィーダー)を設置している旅館や施設,バードウォッチングカフェなどに行かれることをお勧めします.調べればきっとヒットします.

 

公園では,バードウォッチャーに聞いてポイントを教えてもらうことも一つの手です.「観察中すみません,シマエナガを見たいのですがどこで見られるか教えていただけますか?」で殆どのバードウォッチャーは親切に教えてくれます.(撮影中,観察中の場合は動作が終わるまで待ちましょう)

小鳥の群れは同じ場所を巡回することが多いので,一度出た場所に再度出現することがあります.待っていれば,リリリ,ジュリリの鳴き声が聞こえてくるハズ.ですがいたとしても,この小ささと素早さでは,双眼鏡はマストです.

 

幸い,本州のエナガと行動や鳴き声に違いはないので,北海道に行く前に練習をしてから,シマエナガに挑むのも手です.
まずは
・シルエット(尾が長い小さい鳥・速い)
・鳴き声(ジュリリ,リリリ)
・習性(冬は群れで動く)
を覚えるとよいでしょう.1日1時間,1週間つづけてみれば,よく似ているシジュウカラなどのカラ類とは,はっきりと識別ができるようになると思います.
このブログも,小鳥探しに関してはヒントになるかも??

 

長くなりました.それでは.

 

エナガの鳴き声はコチラ.

2023.01 越冬が続くリュウキュウサンショウクイ (Ryukyu minivet)

リュウキュウサンショウクイ(Ryukyu minivet)January, 2023
いつもの公園で野鳥を観察しました.

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リュウキュウサンショウクイ(Ryukyu minivet, Pericrocotus divaricatus tegimae

この冬フィールドに居着いているリュウキュウサンショウクイ
ヒリリリンという鳴き声を頼りに探します.針葉樹に潜りこんで食べていたものは...

蜘蛛!
腹の形の特徴からして,どうやら ”コカニグモ (Argiope amoena) ”のようです.スギやヒノキ,サワラのような針葉樹の樹皮に潜む蜘蛛です.

立て続けに別の蜘蛛もゲット.

今度は蜘蛛のほうも糸を吐いて懸命に抵抗します.
これはまた種類が違うよーな...? → 拡大写真はページの末尾へGO!

針葉樹の樹皮は小昆虫や蜘蛛の絶好の隠れ場所.シジュウカラヤマガラといった他の小鳥と同様,樹皮をペリっとめくってエサを探しています.

 

蜘蛛の栄養価は?
サンショウクイは蜘蛛を食べることが分かりました.食材としての蜘蛛,一部では亜鉛が豊富とか言われていますが,一体何がどれだけ含まれているのか気になります.
ということで一応調べるだけ調べてみました.
主たる栄養素は「タンパク質,炭水化物,ミネラル (Ka, Mg, Zn, Fe, P, Ca),各種ビタミン,糖質」のようです.一応亜鉛は含まれていますが,具体的な値はわかりません.これだけでは昆虫とあまり変わらない気もします.
脱皮を繰り返す生き物なのでミネラル・ビタミンはかなり豊富に含まれているのかな??
Divina, M. A. et.al (2001) "Comparison of the survival of three species of sac spiders on natural and artificial diets"

 

エサを探して低い場所にも姿を見せます.

やはり蜘蛛や小昆虫のいそうな場所を転々とします.

そういえばサンショウクイが木の実を食べているところを見たことがありません.完全動物食のようです.サンショウを食べてピリリとなることはなさそう.

よって,近年のリュウキュウサンショウクイの北進は,温暖化による昆虫相の変化がかなり影響しているのかも...?

 

以下,蜘蛛を召し上がっている拡大写真ですm(__)m

サンショウクイの鳴き声はコチラ.

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