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シマエナガ(Long-tailed tit, Aegithalos caudatus caudatus)
Shima-Enaga,海外旅行客向けにも特集が組まれるほど.今や飛ぶ鳥も落とす勢いの小鳥さんです.
シマエナガの魅力はやはり何といってもモフモフボディとこのお顔
( ● ▲ ● )
まずは今回の遠征写真をご覧いただきます.
かわいい....が,写真としては!たいしたものは撮れませんでした!
代わりに,シマエナガさん情報てんこ盛りでお届けします.
~ふわふわのからだ~
冬のシマエナガはモフモフになります.羽毛を膨らませて空気の層を作り,体温を保持するためです.空気は熱を逃がしにくいので,羽毛で抱えておくととってもあったかいのです.これはシジュウカラとか,他の多くの小鳥にも共通しています.
顔が白いのも冬羽限定で,夏は黒い眉毛を持つ姿に生え変わります.夏は体格もほっそりとし,後ろからみると落ち武者みたいに見えたり見えなかったり...
~どこにいるの~
本州のエナガと同様,町中でも林でも山中でも,基本どこにでもいる鳥です.が,最も安定して観察できるのは冬・市街地の公園.公園には色々な樹種が植わっており,餌を確保しやすい環境にあります.山の食料事情や冷え込みが悪化することもあり,シマエナガを含む多くの鳥は冬になると山を降りてきます.
行動パターンとしては,複数のエナガや,シジュウカラなど別種の小鳥(カラ類)と10~羽程度の群れを成して移動していることが多いです.基本的には本州のエナガと変わりません.
小鳥の中でも,エナガは比較的簡単に見分けがつく鳥です.識別ポイントとしては,
①長い尾.「エナガ(柄長)」の由来は,長い尾を柄杓の柄に見立てたもの.
②鳴き声.リリリとかジュリジュリとか,わかりやすい.
③群れの先頭にいることが多い.やたらめったら速く動く.
でしょうか.
見るには難しくないですが,撮影は難しめです.なんせ小さい(日本で小さい鳥トップ3に入る).それに移動が速い.
見ての通りの小さな嘴は,いちいち樹皮をめくったり木の実をもいだりするには不向きで,次から次へと移動して虫などを啄んでいます.
~つららをなめる~
シマエナガ,樹液を含んだ氷柱(つらら)を舐めることが知られています.何度かそのシーンを見ることがありました.氷柱舐めはエナガだけが行っているわけではありませんが,ホバリングが得意な分,他の小鳥よりも目立ってそのシーンが見られます.
~国内のエナガ4亜種~
そもそも,北海道以外の国内で見られるエナガ(A. c. trivirgatusほか,全3亜種)には写真のように黒い眉があります.4亜種目のシマエナガだけ,眉がありません.
国内の4亜種
1. Aegithalos caudatus caudatus:シマエナガ 眉×
2. Aegithalos caudatus kiusiuensis:キュウシュウエナガ 眉○
3. Aegithalos caudatus magnus:チョウセンエナガ 眉○
4. Aegithalos caudatus trivirgatus:エナガ 眉○
ちなみに「シマ」は北海道のことで,津軽海峡を越えて本州で確認されることは滅多にありません.なので世界的に見ても北海道限定かと思いきや!
なんとシマエナガ,ヨーロッパにかけて幅広く分布しています.分布図はこちらを参照ください.小豆色が北方系のエナガ=「シマエナガ」です.
(ただし近年,"Aegithalos caudatus japonicus"として,「北海道のシマエナガ」を独立した亜種とみなす動きもあります.素人目には違いがわかりません...)
具体的には,以下の4グループに分類されます.亜種の数については意見が分かれるところであり,17~20と言われています.
世界の亜種・4グループ※
1. The caudatus group (1~?亜種・ヨーロッパ~アジアの高緯度,「シマエナガ」)
2. The europaeus group(9亜種・南~西ヨーロッパ,中国NE,日本3亜種)
3. The alpinus group(7亜種・地中海から東南アジア)
4. The glaucogularis group(2亜種・中国)
※ Harrap, Simon, (2010) Tits, Nuthatches and Treecreepers Bloomsbury Publishing Plc, p100.
画像転載はできないので,それぞれのエナガグループの写真は以下のキーワードを打ち込んでご自身で調べてみてください.また,eBirdというサイトにも地域ごとの写真が掲載されています.
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1. "シマエナガ" / 2. "エナガ" (日本),"Aegithalos caudatus rosaceus"(イギリス) / 3. "Aegithalos caudatus irbii"---------------------------------------------------
4. "Aegithalos caudatus glaucogularis"
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エナガはユーラシア大陸に広く分布していますね.渡り鳥ではないので,各地で独自の進化を遂げた結果,非常に多くの亜種を持つグループになったようです.
この中で眉がないのは,やはりシマエナガだけです.カムチャッカから北欧まで高緯度地域に広く分布しており,雪景色に溶け込みやすいよう白い顔になっているようです.
~で,どこでシマエナガを見ればいいの?~
ここまで書いてきて,普段野鳥観察をされない方にとっては,モフモフまっしろのシマエナガを見ることは相当困難であろうということがお分かりいただけたと思います.
その目で確実に見られたい方は,餌台(バードフィーダー)を設置している旅館や施設,バードウォッチングカフェなどに行かれることをお勧めします.調べればきっとヒットします.
公園では,バードウォッチャーに聞いてポイントを教えてもらうことも一つの手です.「観察中すみません,シマエナガを見たいのですがどこで見られるか教えていただけますか?」で殆どのバードウォッチャーは親切に教えてくれます.(撮影中,観察中の場合は動作が終わるまで待ちましょう)
小鳥の群れは同じ場所を巡回することが多いので,一度出た場所に再度出現することがあります.待っていれば,リリリ,ジュリリの鳴き声が聞こえてくるハズ.ですがいたとしても,この小ささと素早さでは,双眼鏡はマストです.
幸い,本州のエナガと行動や鳴き声に違いはないので,北海道に行く前に練習をしてから,シマエナガに挑むのも手です.
まずは
・シルエット(尾が長い小さい鳥・速い)
・鳴き声(ジュリリ,リリリ)
・習性(冬は群れで動く)
を覚えるとよいでしょう.1日1時間,1週間つづけてみれば,よく似ているシジュウカラなどのカラ類とは,はっきりと識別ができるようになると思います.
このブログも,小鳥探しに関してはヒントになるかも??
長くなりました.それでは.
エナガの鳴き声はコチラ.